こころ動く その8

こころ動く

 

インドに行く。

僕はそう決断した。

何の取り柄もなく誰からも求められていない男が自分で決断した。

と言うよりはこれも外部からの影響もあるので全てを自分が決断したわけではないと思う。

初動としてはなぜか興味を持ち何となく行動していた。

今回に関しては不思議な気持ちだった。

今回だけだと思うからやってみよう。

帰ってきたら普通の生活に戻るんだ。

そんな気持ちでいた。

ある休日に気がついたことがある。

いつも眺めているこの景色は今だけなんだよね。

僕が信じるものは基本的に自分がその場で見たものだけである。

だからキレイなものをキレイといい汚いものは汚いと言う。

この発言に気を悪くする人もいる。

しかしその場で出た自分の感想は一番大事だと思う。

社会に出て尚更そう思った。

ちょっと違うんじゃない?そんなこともスルーして作業を進めたり会議で絶対おかしいだろとツッコミを入れたくなる時も静かに大人しくしている。

みんなが他人事だからだ。

波風立てたくないし会議が長くなるのも困る。

上司が決めたんだから仕方がない。

そういうことが多い。

うまく行こうがダメだろうが知ったことではない。

搾取される側は基本待っている人間だから。

貧しい国で外国人に対してお金をくださいと手を出してくる人たちと同じである。

いや、状況を考えてみたら彼らは仕方なくそうしている。

我々は衣食住が揃っているにもかかわらず、生活が満たされているにもかかわらず待っている人間はタチが悪い。

僕もその一人だ。

こういうのが一番厄介なんだ。

世の中では変な事件が増えている。

これだけ物が揃っていてこれだけ食べるものも揃っていて何が不満なんだろう。

「あの人はあんなに高い車に乗っていてなんで私たちは軽なの?」

「エステにも行って高い化粧品も買って何でうちはこんなに質素な生活をしなくちゃいけないの?」

比べればキリがない。

でも比べなければ競争が生まれず進化しない。

運動会では順位を付けない学校もあるらしい。

恐ろしい世の中だ。

そのうちテストの点数とかなくなるんじゃないかと言う勢いだ。

僕は競争は必要だと思う。

人間は進化しなくちゃいけない。

少しずつでもいい。

前に向かって生きていかなくてはいけない。

そんな自分はいつも下を向いている。

そこも情けない。

そんなことを考えながら散歩していると一瞬だけ強い風が吹いた。

前髪がオールバックになるくらい強い風だった。

ふと横を見てみると田んぼ一面の緑が揺れ背景には夕日が眩しく僕を照らしていた。

美しかった。

 

自慢のスマホで写真を撮ってみた。

撮った時はすでに風はおさまっていてただの散歩コースを写真におさめただけだった。

家に帰ってからその写真を見ていた。

買ってからしばらく経つスマホだが写真が保存されていたのはその1枚だけだった。

「あの一瞬を残してみたいな。」

そういえば僕はインドに行く。

あくまで予定だ。

「人生で1回だけだろうから自分が歩いた道を、自分が見てきた景色を写真に残しておきたいな。」

そんな気持ちになった。

カメラなんて持ったこともないし考えたこともなかった。

どういうカメラがいいんだろう、キレイに撮りたいな。

そんなことを思うようになった。

つづく。

 

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