見たことのない景色 その6

見たことのない景色

 

いざ水の宮殿へ。

近かった。

本当にすぐだった。

小さい湖の真ん中に白い宮殿が浮かんでいるようだった。

湖には空の青が写っていた。

快晴という天気事情もあり神秘的に見えた。

しばらく見ていたかったが若者は見学をものの10分で終わらせた。

僕も彼らについていった。

ここはジャイプール郊外であり市内ではないらしい。

彼らの話だと市内の渋滞はヒドくハマってしまうと全く動かないらしい。

僕ら3人は誰も宿の予約をしていなかった。

宿を探そう。

とりあえずカイト君は近くにいたオートリクシャーの運転手に市内のある場所を指定して金額交渉をしていた。

「どこ行こうとしてるの?」

僕はカイト君に聞いた。

「旅の途中で誰かから聞いたおすすめの宿がジャイプールにあるんですよ」

カイト君は地球の歩き方にあった宿を指差していた。

運転手は近くまでは行けるけど詳しくは分からないみたいだ。

とにかく市内に行こう。

運転手との金額交渉もまとまり市内へ向かった。

オートリクシャーの風が心地よかった。

しかし砂がすごい飛んでくる。

インドの街並みを見ながらしばらく走った。

もちろん渋滞にもハマった。

噂では聞いていたがこれがインドの渋滞か。

交通ルールはあるのか?

そんなのあるわけない。

しかしうまいこと当たらないようにしているな。

運転技術といえば聞こえはいいがそもそも交通ルールがないことが問題だ。

しかも空港付近で少し信号を見ただけであとは見ていない気がする。

もしかしてないのかもしれない。

これがこの国の事情なのだろう。

かなりの時間がかかったが宿付近に着いたらしい。

僕らは250ルピーを出しあい歩いて探すことにした。

宿がなかなか見つからなく街の人に聞いても分からないという。

ないんじゃないかな?

内心そう思っていたがカイト君はあると信じて進んだ。

だんだん日が暮れてきた。

夕陽に当たると建物がオレンジというかピンク色に染まる。

「ここはピンクシティーって呼ばれてるんですよ」

カイトくんは言った。

僕はうなずきながらこの夕陽に照らされたきれいな街を眺めながら歩いた。

カイト君がまた人に場所を聞いている。

もうこれで何回目だろう。

サチさんと僕は少し疲れていた。

特にサチさんは僕よりも大きいバックパックを背負ってここまできた。

大変だと思う。

「ありました」

彼のテンションは上がっていた。

こんなところに宿を作るんだ。

ここがおすすめ?

お世辞にもキレイとはいえない外観。

その周辺も安全とはいえないくらい人は少なく何かあっても助けはこないだろう。

とりあえず僕らは疲れていたので中へ入ってみた。

宿帳に個人情報を記載しパスポートをスタッフに渡す。

コピーが終わりパスポートはすぐに帰ってきた。

個室しか空いてないよ。

スタッフはそう言った。

女の子もいるからその方がいい。

僕らはそれに従い宿代の900ルピーを払い部屋へ案内された。

「荷物を置いたらご飯食べに行きましょう」

カイト君はそう言い別れた。

部屋は全然悪くない。

しかし一つ問題があった。

お湯が出ない。

仕方ない。

シャワーは諦めるか。

夕食から帰ってきたら水シャワーで我慢しよう。

外の気温は8度と表示されていた。

とりあえずバックパックを置きロビーへ行く。

この宿をよく見ればおすすめされたのがよく分かる。

建物は古いがキレイに清掃されている。

スタッフの対応も良い。

旅先のやどでトラブルにあうことは多いと思うがこういう宿を選べば問題ないのだと思った。

少し時間がたってから彼らもロビーにきた。

「街に出ましょう」

インドはこの街に限らずホコリや排ガスがすごい。

部屋に戻った時も自分の鼻の中をティッシュでグリグリしたが真っ黒だった。

サチさんはマスクをしていた。

カイト君は慣れているのか全然気にしていない様子だ。

僕自身も働いている工場のなかはホコリがすごいのでそこまで気にはならなかった。

ピンクシティ。

日は暮れてしまいあたりは暗くなっているものの建物は美しく僕らを見下ろしていた。

観光できるところはほぼ閉まっていてる。

僕らは夕食ができるところを探していたがなかなか良いところがなかった。

急に大通りが出てきて車やオートリクシャーの交通量が多くなっていた。

そこに見えたのはライトアップされた世界遺産、風の宮殿。

いつの時代にこんなものを建てたのだろう。

1799年だ。

当時の人たちはこれをどうやって建てたのだろう。

感動と疑問という変な感情を抱きながら近づく。

観光客はあまりいなく地元の人以外は僕らだけだった。

窓がステンドグラスで出来ていて神秘的に見える。

正面から見ると結構でかい建物だが少し横から見ると後ろの方は小さくハリボテのようだった。

長い時間見上げたあと僕らは一緒の写真を撮った。

道路から建物が非常に近いため全体が写らず地元のインド人に写真を頼んだ。

彼は僕のカメラを手に取り得意げに撮っていた。

僕は彼にありがとうと言いカメラを返してもらった。

いま何時だかも分からず夕食も選べず結局宿へ帰ってきた。

そしてインドの宿はだいたい屋上にレストランがありそこで食べた。

何を食べていのかわからないがとりあえずカレーとバターナン。そしてタンドリーチキン。

僕が頼んだカレーは辛くなかった。

僕は辛いものが食べられない。

カレーの王子様が限界だ。

カイト君は辛いカレーだったらしい。

しかし勢いよく食べている。

若いなあ。

うらやましかった。

僕も学生の頃はスポーツをしていて人よりも多く食べていた。

そして何より太らなかった。

今は少食だ。

太るわけもない。

サチさんは女の子らしく静かに食べている。

移動が多くそんなに話すこともなかった3人が少しずつ話し始めた。

彼らは言葉になまりはないが関西の出身だそうだ。

僕は群馬だから同じ日本でも全然違う。

カイト君はこれからアグラ、デリーへ行きそのあと飛行機でムンバイへ行くそうだ。

彼の旅は終わらない。

学校の勉強をどうしているのだろうと疑問に思いながらも彼の話を聞いた。

いまは異性には興味はなく普段アルバイトをしたお金で長期連休の時に旅をしたいそうだ。

いいことだと思う。

そしてこの経験を生かして社会を羽ばたいていくのであろう。

サチさんは明日の朝にバスターミナルへ行きデリーに戻り空港へ行くそうだ。

あまり事情は語らなかったが置いてきた友達のことは心配していた。

僕は気になっていたことがあった。

お金の相場があまり分からない。

ここに来るまではなんとなくぼったくられてきてあとは彼らと行動をしていたからインドの相場が分からない。

僕がバスに使った費用や空港から市内まで乗ったタクシーの費用を彼らに言った。

彼らの答えは

「高いですよ」

やはりそうだった。

そして飛行機のチケットも相当高かったらしい。

僕は日本からインドまで19万円かかっている。

彼らは4万円ちょっとだそうだ。

いくら乗り換えがあるとはいえそれは安い。

彼らは教えてくれた。

スカイスキャナーというアプリがあるらしい。

僕はそれをメモして日本に帰ったらインストールしようと思う。

と言ってもこんな旅になるのは今回だけなんだよな。

物価事情は彼らに教えてもらいなんとなく分かった。

空港から使ったタクシーは300ルピーで十分でデリーからジャイプールまでのバスは500ルピーで大丈夫だとのこと。

僕はタクシーに500ルピー、バスに2000ルピー使ってしまった。

そして空港で両替した100ドルで5000ルピーも本当は6500ルピーくらいだったらしい。

知らないって怖いね。

いくら損をするか分からない。

ご飯を食べ終わり部屋に戻る前にカイト君は言った。

「大晦日ですよ、カウントダウンしましょう」

時刻は午後9時だった。

まだ時間があるから部屋でシャワーを浴びもう一度外に出ることになった。

僕は部屋へ行きシャワーを浴びようと思った。

「水しか出ないんだよな」

不満を言いながらも蛇口をひねった。

あれ?

お湯でるじゃん。

普通にシャワーが浴びれている。

なんと幸せなのだろうか。

しかし幸せは長く続かなかった。

約1分で水に変わる。

逆にツラさが増してきた。

なんとか寒さをこらえてシャワーを終える。

体を拭き着替えてから外に出た。

3人が集まり外に出た。

何もない。

レストランは全てしまっていてこの付近は街灯の明かりしかない。

近くでプラプラしているインド人に声をかけてみた。

ここら辺はもう空いているバーやレストランはもうないよ。

僕らは粘った。

「ジュースやお菓子を売っているところなら近くでまだ開いているよ」

僕らはそのインド人に案内してもらった。

本当に小さいお店だ。

しかしここしか開いていない。

僕らはそこでジュースや見たこともないお菓子を買った。

ホテルで年越しをしたかったからだ。

結構買ったな。

そう思いながらお菓子を抱えホテルに戻った。

3人とも一度部屋へ戻り僕の部屋に集まるという。

ちょっとしてからサチさんが先に来た。

「このホテルのお湯が出る時間短くないですか?」

サチさんは

「え?普通に出ましたよ」

そのままバスルームに行き

「ほら」

と言った。

お湯が出続けている。

何かコツがあるのだろうか。

僕がやると水に変わる。

色々と試してみないとな。

1回やって諦めるのはもったいない。

ちゃんとやっていれば快適なシャワータイムが得られたのかもしれない。

カイト君が来ない。

「寝ちゃったのかな」

そのすぐ後にガチャっと扉が開いてカイト君が入って来た。

「ちょっと寝ちゃいました」

疲れていたのだろう。

とりあえずお菓子を開けジュースも用意していた。

始めようと思ったその時スマホの時計を見たらちょうど12時になっていた。

「明けましておめでとうございます」

ジュースだが乾杯した。

特別盛り上がるわけでもない、ささやかなハッピーニューイヤーだった。

彼らはスマホに目をやり何やらお互いの画面を見せ合っている。

フェイスブックだ。

僕はこの時はまだ登録していなかった。

「やった方がいいですよ」

カイト君が言った。

彼らの今までの物語がそこにはあるらしい。

やっぱり僕は遅れていた。

このアプリの存在は知っていた。

自分の顔を世間に出してアピールするのが怖かった。

しかしいま考えてみるともったいないことをしたと思う。

彼らのような未来ある若者がこれからどうやって仕事につき様々な困難を乗り越えていくのかがわかるようになる。

僕はもう若くはない。

仕事を始めてから15年ほど過ぎていたがまだまだ何も知らない。

こういう若い人から学んだり交流を持つことは悪くはないと思う。

こういう目線で物事を語るなんてもうおっさんだな。

彼らは部屋に戻り僕も疲れていたのかすぐに眠りについた。

つづく。

 

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