見たことのない景色 その8

見たことのない景色

バスは今アグラを走っている。

そこにはあの有名なタージマハルがあり観光地である。

僕らが乗っているバスはそこへ向かっている。

思っていたよりも寒い。

日は出ているものの空気が寒い。

テレビで見ているインドとは何かが違う。

自分が作り上げてしまったインドのイメージがどんどん変わってくる。

僕の目から入ってくる情報が全て新しく見える。

これから見るタージマハルはもっとすごいのだろうか。

今日は1月1日。

元旦だ。

かなりの人がタージマハルを見に来るだろう。

僕の中の何かが変わる理由としてインドという国は十分な存在だった。

アグラという街に入ったみたいだ。

渋滞が始まった。

行きと同じようにバスの前方のドアが空いた。

バスの中にいる人々は途中でどんどん降りていった。

目的地が近いからだろうか。

僕たちも降りる準備をしていた。

バスターミナルではないが僕たちは降りた。

あたりには観光客らしい人たちで溢れていた。

ここら辺なのだろう。

僕たちはそう思った。

ジャイプールを出発してから約5時間。

ずっと座りっぱなしだったから屈伸をした。

僕たちは朝食をとっていない。

昨日買ったマズいお菓子とコーラだけだった。

「何か食べましょうか」

カイト君はそう言ったしそのタイミングで僕も同じことを思っていた。

僕たちは街にあるホテルを探した。

たいていのホテルの屋上にはレストランが併設されているからだ。

少し歩くとホテルらしき建物があった。

僕たちは迷わずそのホテルに入った。

ご飯だけ食べに来たんだよ。

泊まる訳じゃないよ。

ホテルのスタッフにはそう伝えていた。

3階である屋上に行きレストランの席に座る。

日本人の僕から言えばこれはレストランとは言えずインドの食堂だ。

そういうところもいちいち突っ込みたくなる。

メニューをもらいエッグカレーとバターナンを注文した。

「昨日もそれでしたよね」

そう、僕は食事に関しては何もこだわっていないのだ。

そのクセ好き嫌いが多く母親を困らせてきた。

一度美味しいなと思ったものはしばらくメニューを変えないのだ。

そして少し寒いのでジンジャーハニーレモンティー。

なんとなく言葉の響きで選んでしまったがこれが正解だった。

これもしばらく変えることはないだろう。

カイト君はチャイを頼んでいた。

僕は一度トイレに行こうと席を立ち2階へと降りて行った。

「なんか変だな」

トイレに入って僕は1人でつぶやいた。

正面から入ったのに便器が横向きなのだ。

もし僕がその便器に座ったとしたら足を置く場がないので股を開き両サイドに逃がして座らなくてはならない。

幸い僕は立って用を足すだけだったので問題はなかった。

僕が席に戻り今度はカイト君がトイレに行くと言い席を立った。

彼はどういう感想を持ってトイレから帰ってくるのだろう。

なんか変じゃないですか?

僕はそう予想した。

彼が帰ってくる前に注文したカレーが来た。

そして少し遅れてナンが来た。

僕は食べようとスプーンを取ろうとした時に後ろからカイト君が言ってきた。

「なんか変じゃないですか?」

まさしくその答えがきた。

「ん?何が?」

僕は何も知らなかったかのように言った。

「トイレですよ、絶対変ですよ」

僕は笑ってしまった。

みんな同じ感想を持つんだね。

「僕もそう思ってたよ」

と僕は言い

「ですよね」

とカイト君が言った。

僕たちはカレーを食べ始めた。

カイト君は食べるのが早い。

僕が遅いのだろうか。

それは分からないが彼は食べ終わった。

「良い景色ですね」

僕は彼と向き合って食べていたので気がつかなかったが振り向いてみるとそこには僕が求めていた景色があった。

何とタージマハルが見えるではないか。

何故すぐに気付かなかったのだろうかと悔やむくらいだ。

そして何やらオレンジ色のお城も見える。

アグラ城である。

急にテンションが上がって来た。

僕たちは支払いを済ませ外に出た。

しかしこの荷物を持ってタージマハルの中に入るのは困難らしい。

厳重な警備でそこは守られている。

僕たちはもう一度ホテルに戻りスタッフに荷物を預かって欲しいとお願いした。

100ルピーほど払えば良いという。

僕たちは払った。

そして外に行きオートリクシャーに乗る。

いくらか分からなかったがカイト君が交渉してくれたらしい。

もし僕が1人でここまで来ていたらスムーズに交渉出来なかったかもしれない。

カイト君には感謝をしている。

タージマハルの前まで来た。

今回の僕の目的地である。

とんでもない長い列になっている。

本当に今日入れるだろうか。

僕は心配だったが何やらカイト君は余裕だった。

カイト君は外でフラフラしている係の男を見つけ何やら話している。

僕は英語が分からないがこの列とは別で外国人用の列があるらしい。

もちろんちょっと高い。

ディズニーランドのファストパスのようなものだ。

こんな長い列に並んでいたら日が暮れてしまう。

インド人は列に並ばないからな。

そんなイメージを持っている人もいるだろうが今回に限って言えば並んでいないのは僕たちの方だった。

ここからはどんな景色なのだろう。

さっきレストランから見てしまったから何とも言えないがそれよりも大きなインパクトがあるのだろうか。

この中に入れば答えが出る。

僕はドキドキしながらこの暗い通路を進んだ。

そして少しずつ光が差してきた。

つづく。

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