見たことのない景色 その10

見たことのない景色

 

「お待たせしました」

カイト君がタージマハルの中から出て来た。

「早かったね」

僕は言った。

カイト君は

「あんまり見るものなかったですね」

と言った。

感じることは人それぞれというものの今回は一緒だった。

ちなみに左の若い子がカイト君。おじさんは右。

ここからは何となくお互い別行動でフラフラしていた。

来るときに歩いたところへ戻り水がキレイなのを確認したところ学校のプールと同じでコンクリートを水色に塗ってあるからそう見えたのだ。

工夫といえば聞こえはいいがよく見るとちょっと安っぽく見えた。

僕にとってはここが目的地だからちゃんと見ようと思い長い時間をかけて見た。

実際のところ見れば見るほど感動が薄くなっていく。

そんなものなのであった。

ある程度見て回った時にカイト君を見つけたため合流し

「満足したよ」

と僕は言った。

外へ出て今度はすぐ近くにあるアグラ城という場所にも行った。

「タージマハルとアグラ城の裏に川が流れていて対岸に公園があるみたいなんですよ」

「そこから両方を夕陽を背に写真を撮りたいんです」

カイト君はそう言った。

そんなところがあるのなら僕も行ってみたい。

まあ、まずはアグラ城へ。

ここはあまり並んでなくすんなりと入場口にたどり着いた。

金額は忘れてしまったが入場料を払い中に入った。

手入れがしっかりされていてキレイなお城だな。

僕の素直な感想だった。

お城の中は風通しがよく広々とした中庭があり観光客ウケしそうな造りだった。

芝生もキレイでこのアグラという街に世界中の人たちがやってくる理由も分かった。

作り自体がしっかりしていて壊れにくいのではないかと思う。

しかもこういう石造りができるのはおそらく地震が少ないという歴史的な背景があるのではないのかと思う。

日本ではこれだけ大きく石造りのアーチ状の建物は作れないはずだ。

いや、作らないはずだ。

数々の地震でダメージを受け崩れてしまうのが目に浮かぶ。

ピザを焼く石造りのオーブンくらいの大きさなら問題ないだろうがこれだけ規模が大きくなるとそうはいかない。

建築関係の若手はこれだけでもここに来る価値はありそうだ。

そして建築関係ではない僕が上からいう台詞ではない。

ここでも別行動にしてゆっくりと見て回った。

座って休んだり一番上まで行き街を眺めてみたり石を触ってみたり全てが僕の中で新しい情報としてインプットされてくる。

もともと僕はいろいろなものを見て回るのが好きだった。

遠出をすれば必ず歩いてその街の雰囲気を肌で感じる。

車やバス、電車で通り過ぎただけだと頭に残らない。

ただ、歩けば全て思い出に残っているわけでもない。

忘れちゃう生き物だから。

でも歩いた場所はいつもの場所であろうが一回だけ旅行で行ったところだろうがふと思い出すことがある。

何をきっかけに思い出すのかは分からないが寝る前や仕事中などふとした時にあの時歩いた感覚が蘇る。

僕だけではないはずだ。

人間自分の足で歩けなくなったらツライ。

若いのにガニ股で猫背で面倒臭そうに歩く人もいればお年寄りでも背筋が伸びていて若々しく歩いている人もいる。

僕は歩くのが大好きだ。

散歩が人一倍好きだ。

自分が住んでいる街でも初めての街でも歩くことによってその土地のことが分かる。

僕はそう思っている。

しかし群馬県は車社会だ。

社会人1人に対して1台の車保有は当たり前。

ちゃんとした数字を見てみないと何とも断定はできないがそんなイメージがある。

僕も車を持っているし毎日乗っている。

便利な乗り物だ。

でも歩くことの重要性を今までより強く感じている。

歩けなければ何も始まらない。

日本に帰ってからもそれは心の中に強く刻んでおこう。

もうそろそろいい時間だな。

そう思っていたところにカイト君と合流できた。

「そろそろ行こうか」

「このお城良かったよ、満足した」

僕は言った。

カイト君はさっき言っていた対岸のスポットに行きたいみたいだ。

まだやることは残っている。

僕らのバックパックを回収しなくてはならない。

そしてカイト君が

「できれば今日のうちにデリーに戻っておきたいんですよね」

え?

それはまた凄い計画を出してきたね。

「分かった、行こう」

僕は言った。

つづく。

 

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