異文化そして洗礼 その4

異文化そして洗礼

 

僕たちは少しほっとしていた。

バックパックを手に入れたからだ。

ホテルの人に預けたとはいえ帰ってくるか分からないからだ。

インドの人がこのことを聞いたら怒るだろう。

しかし我々日本人から見たらインドはそういうイメージなのだ。

全ての人ではないのは知っている。

大まかなイメージで見るとそうだということ。

外国から見た日本がサムライや車、そして家電を作っている国というイメージしかないのと同じだ。

空を見上げれば真っ暗だ。

バスはどうなっているのだろう。

待っててくれているのだろうか。

もし待っていなかったら今日泊まるホテルを探すしかないな。

そういうパターンも考えなくてはと思っていた。

また渋滞が始まった。

同じところだ。

運転手はヘルメットを取り隣のオートリクシャーの運転手と話をしている。

また長いのか。

僕たちは少しため息をつき少しだけ残っていた水を同じタイミングで飲んだ。

景色は暗くなってきて街灯がつき出した。

街灯のせいか車やオートリクシャーから出る黒煙が一段と目立つ。

モクモクと下から上へと行き我々はその煙を吸っている。

しかしこの短期間に慣れてしまって咳もしないし嫌な感じもしない。

慣れとは恐ろしいものである。

遠くを見ていた運転手が慌ててヘルメットを被った。

なんだろう。

急に動き出しオートリクシャーは前へ進んだ。

何がきっかけかは分からない。

しかしこの運転手は何となく経験で分かったのだろう。

すぐ準備して動けるようにしていた。

さすがプロだ。

この時だけはそう思った。

僕たちはバスターミナルへ向かっている。

本来の目的はバスに乗り今日中にデリーに行くことだ。

僕の中では少し無理かなと思っていた。

カイト君は行けると信じていたのだろう。

こういうところを見習わなくてはいけない。

僕は「最近の若い人は」など悪口や嫌味などは言わない。

そういうのが口癖になっている人もいるはずだ。

考えてみて欲しい。

こんな真っ直ぐな考えを持っている若者に悪口を言っても何も始まらないではないか。

逆に見習うべきなのではないだろうか。

人生経験が少ないからこそ真っ直ぐ自分の信じた道を進める。

色々と大人の事情を知ってしまった僕には出来ないことだ。

見習わなくてはいけない。

今回の旅で彼には色々と助けてもらっているからではない。

普通に彼の姿勢を見習おうと思った。

バスターミナルが近づいてきた。

僕が見る限り50台近くのバスが待っていてここアグラからインド各地へ出発しようとしている。

僕たちが昼間見たバスはどこだろう。

まだ遠いからここからは見えない。

そして暗いからどんなバスか分からない。

運転手が僕たちの方を振り返り親指を立てた。

着いたよ。

そんな合図だと思い僕たちは頷き親指を立てた。

オートリクシャーが駐車場で止まり僕たちは運転手にお金を払った。

彼は嬉しそうだった。

そして僕たちに向かって何か言った。

まわりのバスのエンジン音がうるさくて聞こえなかったが遠くを指差している。

僕たちはその方向を見た。

デリー行きのバスが待っていた。

僕たちのテンションは上がった。

最後に運転手にお礼を言いバスの方へ駆け寄った。

「待ってたよ」

バスの運転手がそんなようなことを僕たちに言った。

とりあえずこれでデリーに行ける。

なんか気持ちが高ぶってきた。

インドも捨てたものではないな。

上から目線だがそう思った。

バスが出発する。

そういえばこのバスを昼間見たときの疑問が頭をよぎった。

ずいぶん古いバスで窓が変だな。

そういう印象を持っていた。

いざ座席に座ってみるとその疑問の答えが出た。

窓が全部閉まらない。

ちょっと空いている。

他の座席の人はそれが分かっていたかのように毛布を持参していた。

嫌な予感がした。

外は寒かった。

ここからデリーまでは約4時間かかる。

この寒さでしかも外気が入ってきたら凍えてしまうのではないだろうか。

僕はユニクロの薄いダウンを着ている。

カイト君はパーカーのみだ。

大丈夫だろうか。

そう思いたかったが僕もこの薄いダウンでデリーまでたどり着けるだろうか。

心配だった。

出発したバスが街を走る。

そして前のドアを開けて添乗員らしき男が「デリー‼︎デリー‼︎」と叫ぶ。

外では乗りたそうなインド人が手をあげているがバスは止まらない。

乗りたい人はこのバスの速度に合わせて走り飛び乗るのだ。

しかもジャイプールからのバスとは違い速度を落とさないからみんな追いつくのがやっとだった。

何とか10人くらいのインド人が乗ってきた。

もう席がないと思ったとき添乗員らしき男はドアを閉めた。

そして大通りに入り速度が早くなってきた。

速度が速くなってくると同時に窓から外気が入ってきて車内はとんでもなく寒くなってきた。

僕たちは寒くて震えていた。

あと4時間この中で耐えられるだろうか。

インドって暑いはずなんだけどな。

今日だけかな。

そうではない。

毎年凍死する人が100人単位で出るほど寒いのだ。

ちゃんとした情報を言うと日本の方が寒い。

しかしここは全員が衣食住が満足に揃っているわけではない。

布切れ1枚でこの冬を越そうとしている人も大勢いるのだ。

そういう人が凍死していくのであろう。

僕がダウンを着ててこんなに寒いのだから彼らは死んでしまってもおかしくはない。

残念だが僕は彼らに何もしてやれない。

いま僕は自分のことで精一杯だ。

とにかく寒い。

自分のもものあたりをさすさすしている。

まだ着かないのかな。

出発したばかりです。

このバスに乗ったことを少し後悔していた。

つづく。

 

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