異文化そして洗礼 その6

異文化そして洗礼

僕たちは今デリーの暗闇の中でホテルを探している。

歩いていくうちにだんだんと明るくなってきてメインストリートに近づいてきている。

その中にはいくつかホテルがあるだろうと思う。

予約はしていない。

今日空いてますか?みたいな感じでいくのだ。

彼もそうだし僕もそういうスタンスだ。

こういう国だから通用するのかな?

他の国だったら予約がないので入れません。なんて言われるのかな?

それは分からない。

とりあえずインドという国はこのスタンスが通用するらしい。

メインストリートに来た途端賑やかになってきた。

タクシー、オートリクシャー、レストランなどの客引きが僕たちに近寄ってきている。

しかし肝心のホテルの客引きはいない。

僕は客引きにあんまり良いイメージを持っていない。

日本でも客引きはいて営業をかけてくる。

居酒屋でもキャバクラでもだいたいそういうところで良い印象を持ったことなどない。

おそらくここでもそうだろう。

ここは日本ではなくインドのデリーだ。

しかし何となくだが客引きについて行ってはいけないという本能がある。

彼らはお客さんをお店に連れてくるのが仕事だ。

それはわかっている。

日本でもインドでも彼らの仕事を批判するようなことはしない。

ただ僕の客引きに対するイメージが良くないだけだ。

カイト君もそうだったらしい。

声をかけられてもほぼ無視だ。

これは相手にとって失礼なことではないと思う。

もし声をかけられて少し話してやっぱりそのお店に入りませんでしたとなればそのほうが失礼だし相手も自分も失う時間がある。

そのほうがお互いに失う時間はないしすぐ次に切り替えられる。

あくまでも僕の感覚だが無視でいいのだ。

メインストリートを少し歩くと右側に大きいスペースがあり屋台がありオートリクシャーの運転手が休んでいた。

こんなに需要があるのかな。

運転手が多すぎる。

その奥にHOTELと書いてある看板がいっぱいあった。

僕たちはオートリクシャーの運転手たちの視線を受けながらホテルの方に歩いて行った。

一番看板が大きいホテルは高かった。

何と2000ルピー。

無理だ。

「クレジットカードでもオッケーだよ」

彼はそう言ったが僕はクレジットカードを持っていなかった。

カイト君は高いから他に行きましょうと言った。

僕たちは他のホテルを探した。

色々とまわったがやはり首都デリーということもあって高い。

なんか思っていたよりも高いな。

このまま時間だけが過ぎていくのだろうか。

少し奥に入ったお世辞にもキレイとはいえないホテルに入ってみた。

ダメもとで聞いてみよう。

フロントの男が言った値段は500ルピー。

あ、いいじゃん。

僕はそう思った。

カイト君もここしかないなと思ったらしくうなずいた。

部屋は2部屋空いているかを確認した。

さすがに1部屋で2人はキツイよ。

お互いにそう思っていたはずだ。

ドミトリーならまだしも2人だけはないよね。

とりあえず部屋はあるのを確認できたしパスポートを渡してコピーをしてもらおうとした時だった。

コピー機が壊れている。

「パスポートは明日の朝まで預かっておくよ」

店主はそう言った。

僕とカイト君は今返してくれないと困ると言って手を出した。

何でこの国のホテルはコピー機が壊れているのだ。

それじゃ困る。

僕たちはこのパスポートがないと自分を証明できるものがないのだ。

何かのトラブルに遭った時にこのパスポートだけが頼りなのだ。

しばらく口論になったが結局パスポートは預けることにした。

僕たちが彼らを信用していないのと同じで彼らも僕たちを信用していないのだろう。

そのことが強く伝わってきた。

「とにかく部屋は確保できたことだし荷物を置いて夕食を食べに行こう」

僕はそう言い部屋へ行った。

ジャイプールでもそうだったがここも悪くない部屋だ。

部屋を一通り確認してロビーに行った。

カイト君は後から来て言った。

「お湯出ました?」

ん?

そういえば確認してなかったな。

「お湯が出なかったんですよ」

それはやばいね。

この寒さの中バスで凍えてきてやっとホテルに着いて温かいシャワーを浴びれると思ったのにまた水シャワーか。

僕は半分諦めていた。

「安かった理由はこれだったのかな」

カイト君はボソッとそう言った。

僕もそう思った。

仕方がない。

そういうホテルを選んでしまったのだ。

今から何を言っても始まらないのだ。

カイト君は日本人が経営しているレストランがあるから行ってみたいと言った。

僕はうなずきついていくことにした。

しばらく歩くと小さいレストランに着いた。

こじんまりとしたレストランだ。

日本人の女性が出てきて対応してくれた。

旦那さんはインド人だったと思う。

ここら辺は記憶が曖昧だ。

ローカルの食材で作った日本食と言った感じの夕食だったと思う。

デザートにあんみつが出てきた。

ここには無料WiFiがありカイト君はパスワードを店主に聞いていた。

実を言うとこの頃僕はWiFiを知らなかった。

無料でインターネットに繋がるなんて思いもしなかったから今までのホテルもそんなことは気にせずにスマホはただ非常用として持っていただけだった。

そういえばジャイプールのホテルでもカイト君とサチさんが何やらスマホを見ていたのはネットに繋げる事ができたからなんだと理解した。

「アキラさんは何でそんなに高いチケット代払ってインドに来たんですか?」

カイト君は不思議そうな顔で僕に質問してきた。

「ネットでHISのサイトにこのチケットがあったから選んだだけで何か理由があったわけじゃないよ」

僕はそう言った後にカイト君はスマホの画面を見せてきた。

「このアプリがスカイスキャナーで一番安いやつとか見つけてくれるんですよ」

水色の飛行機のマークのアプリだった気がする。

そこで見せてくれた成田からデリーまでの最安チケットは48,000円だった。

「安っ」

僕は思わずそう言ってしまった。

「これからはこのアプリを利用した方が良いですよ」

カイト君はそう言ったが僕の旅はここで終わりなんだ。

そう思っていたから話半分で聞いてしまっていた。

いま思えば申し訳ないと思う。

食事も終わりホテルに帰る時店主の女性の後ろから少年が出てきた。

小学生くらいだろうか。

日本語も少し理解しているらしい。

「もう遅いのでこの子がホテルまで送ります」

女性はそう言った。

え?

少年の方が危ないのではと疑問に思いつつも彼の後ろについていくことにした。

僕たちが来た道とは違い遠回りは一切しなかった。

こんなに近かったんだ。

僕たちは少年に対して感心した。

そういえばポケットにいくらかのお金が入っていることに僕は気がついた。

僕はこのお金を少年にチップとして渡そうとしたが少年は受け取らなかった。

初めてだった。

チップを受け取らないなんて。

これはやはり両親の教育なのだろう。

この教育によって子供の人生が変わってくるんだなと感じた。

たとえ裕福でなくとも両親の言うことをしっかり守っている。

僕がこの少年だったらチップを受け取っていただろうな。

ダメだな、僕は。

この少年の未来は明るいだろうと僕は思った。

ホテルに着いてから僕たちは明日の約束をした。

朝8時にロビーで待ち合わせようと。

その後、朝食を食べデリーを観光しようと言ってそれぞれの部屋に別れた。

僕は疲れていたせいかベッドに横になりそのまま眠りについてしまった。

つづく。

 

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