異文化そして洗礼 その7

異文化そして洗礼

僕は疲れていた。

仕事の疲れではなく異国でのカルチャーショックや初めて会った人との行動。

こんな経験はした事がなかったのだ。

国内を旅したときは少なからず疲れはあったがこんなに疲れたことはない。

でも何となくだが嫌ではなかった。

基本的に僕は人と行動するのが嫌だった。

国内で休日に行動するときもだいたい一人だった。

自由を感じていたかったからだ。

自己満足だがそれでよかったのだ。

今回インドに来たことによって普段会えない人と会って一緒に行動して正直疲れているが新しい気持ちが生まれてきている。

年齢や価値観が全く違う人との行動は今までにない世界を見せてもらっている気がする。

こういう事が全てうまくいくとは思っていない。

トラブルに繋がる事があることも知っている。

これがビジネスなら尚更だ。

しかし今回カイト君やサチさんからは色々と学ぶ事が多い。

旅とはこういう事なのだろうか。

僕はずっと一人で行動する予定だったから多分この出会いは偶然なのだろうなと思った。

それはそれで運命だと思って受け止めるしかないなと思う。

今回の出会いは本当にありがたい。

そんなことを思いながらベッドでボーッとしていた。

今は朝の6時30分だ。

これからシャワーを浴びて少しゆっくりしてからカイト君と合流しデリーを観光しようと思う。

まずシャワーを浴びよう。

そういえばお湯が出ないって言ってたよね。

ジャイプールの事もあるから一応試してみようかな。

色々試してみたらお湯が出るではないか。

僕はすぐに服を脱ぎシャワーを浴びた。

しかしやはりここはインド。

ものの2分ほどで水に変わってしまった。

そのあとは何回やり直してみても水のまま。

ここまでやったのなら仕方がない。

水で我慢しよう。

デリーの朝は寒い。

僕のスマホには1℃と記されていた。

この中での水シャワーはツライよ。

とりあえず我慢して浴びたあとすぐに体を拭き下着を着た。

ジーンズとフリースを着てからしばらく経つとよく分からないが体の芯から自分の体温が上がってくるのが分かった。

さすがに汗をかく程ではないがポカポカしている。

水シャワーにはこんな効果があったのか。

荷物を整理しているともうすでに午前7時40分になっていてカイト君との約束の時間に近づいていた。

僕は荷物持って行きロビーで店主にパスポートを返してほしいと言った。

店主は机の中から2つのパスポートを出し僕に渡してくれた。

8時を過ぎたがカイト君が来ない。

何かあったのだろうか。

僕は心配してカイト君の部屋のドアをノックした。

しばらくすると急に慌てて起きたかのような音を立ててドアを開けた。

僕が会社に遅刻している時と同じ音だった。

「すいません。寝坊しました」

カイト君は完璧な寝起きの顔で言った。

「全然大丈夫だよ、ゆっくり用意してね」

僕はそう言いとりあえずパスポートを渡してまた自分の部屋に戻った。

カイト君が僕の部屋のドアをノックし僕が荷物とともに出ていく時に

「もう一晩ここに泊まりませんか?」

そう言った。

僕は全然構わない。

カイト君は今日の観光で荷物が邪魔になるのとホテルを探すのが面倒だったみたいだ。

明日の早朝にカイト君はデリー空港へ行きムンバイに行く。

だから今日の夜まででお別れだ。

ここに荷物を置いておけば観光が楽になる。

僕たちは店主にもう一晩泊まれるか聞いた。

「いいよ」

店主はそう言ってうなずいた。

僕たちはバックパックを部屋に置き身軽になって外に出た。

朝10時。

まずは朝食をとるためにレストランを探す。

このホテルにはなぜかレストランがなく他のホテルの屋上を探した。

「レストランとホテルって書いてあるしここでいいよね」

近くにあったホテルを指差した。

そのホテルへ行き屋上に行ったら店員以外誰もいないではないか。

大丈夫かな。

僕はそう思いながらもジンジャーハニーレモンティーと朝食セットを頼んだ。

60ルピー。

安いではないか。

味の方は大丈夫なんだろうな。

店員が朝食を持ってきた。

不安になりながらも口にすると美味しい。

高けりゃいいっていうもんじゃないな。

僕は思った。

朝食にしては多かったが完食して僕らは次の目的地に行くことにした。

行きたいところはレッドフォート、クトゥブ・ミナール、デリー門、アークシャルダーム寺院、ジャマーマスジット。

これ全部行くの?

カイト君は行けると思っているらしい。

じゃあ行ってみよう。

行けるという根拠などどこにもないがとりあえず行ってみようという気持ち。

大事だよね。

まずはレッドフォート。

別名ラールキラー。

僕も本で見た事があるし来たかったところだ。

近くにいたオートリクシャーの運転手に交渉し50ルピーで行けることに。

なんか安いな。

そう思い乗ってみるとあっという間についてしまった。

やっぱりそうだったか。

そりゃ安いよね。

僕たちはレッドフォートに入った。

少し霧が出ているが大きくこの地域を支配していたことを容易に思わせるくらい大きく立派なお城だ。

入場料を払い中に入ってみるとそこは綺麗な王家の跡地に見えた。

ものすごいお金がかかっているんだろうな。

庭の手入れをするだけでも大変だろうな。

ここにいた人達はみんな高所得者で外いる布切れ1枚で過ごしている人達は貧困層なのだろう。

生まれた瞬間にこんなにも違う人生になるなんて残酷なんだな。

カースト制度なんて無くなればいいのに。

そう思った。

この中では僕たちは別行動をしていてある程度の時間になったら合流することにしていた。

霧が出ているから雑誌みたいな写真が撮れない。

何回撮っても上手くいかない。

多分霧のせいではなくて僕の腕なんだろうな。

もっと上手く綺麗に撮りたいと思った。

ここではかなりの枚数を撮った。

敷地が広いので見て回るのに結構時間がかかった。

しかし同じ景色が続くので意外にもすぐに飽きてしまった。

ひと回りしてからカイト君を見つけたので合流した。

「次に行こう」

僕はそう言った。

次はクトゥブ・ミナール。

僕は地図に詳しくないが意外に近いらしい。

しかも今回はオートリクシャーではなく地下鉄で行くというのだ。

この国に地下鉄があるなんて驚きだ。

僕らは近くの地下鉄表示があるところから階段を降りてチケット売り場に行った。

僕たちは並んでいたが列に並ぶ人などいないのではないかというくらい横入りをしてくる。

僕たちはなんとなくこの人たちが好きになれず絶対前に行かせない精神を持ってガードをしながら進んだ。

よくテレビでは見ていたが彼らは並ばないのだ。

もしかしたら教育をしっかり受けている人達は並ぶのかもしれない。

しかしここには僕を含めて上級階層は誰もいない。

チケットを買うにはこの列で戦わなければならない。

そして僕たちの番になった。

さっきから見ているとここのチケットを売っている人を見ると毎回お釣りを誤魔化しているように見える。

そして指摘されてからやっとお釣りを出しているではないか。

ろくなもんじゃない。

僕が払った金額にもお釣りは来るはずだ。

しかし払おうとしない。

彼の目の前で人差し指をトントンとすると仕方なくお釣りをくれた。

これが普通だろ。

日本では普通だ。

しかしここはインドだ。

日本の普通は通用しない。

いちいちこういうことをしていかないとどんどんお金が無くなっていくようにも感じた。

これも疲れる原因のひとつだろう。

仕方がない。

ここに来た以上はここのルールに従って生きていくしかない。

しかし交渉するところはしっかりしなくてはいけない。

そう感じながらホームの方へ歩いて行った。

電車が来た。

意外に綺麗だ。

ちょっと感心してしまった。

クトゥブ・ミナール駅へ向かう。

多くのインド人が僕たちを見ている。

珍しいのだろうか。

観光客は多いのだから珍しくはないはずだ。

周りには電車を利用している外国人はひとりもいない。

電車に乗っているのが珍しいのだろうか。

少しみんなの視線が痛かった。

僕はここでは外国人なのだ。

そんなの当たり前だ。

10分程で目的の駅につき僕たちは降りた。

階段を上がり少し歩くと入り口があった。

なんか普通だな。

入り口だけ見るとそんな感じがした。

子供の売り子を無視して前に進むと入場ゲートがありチケットを買う場所があった。

僕たちはチケットを買い、中に入ると少し高い塔やお墓などがありなんとなく歴史を感じる場所だった。

中でも低い柵に囲まれた黒い鉄塔が気になった。

ここに設置してから100年くらい経つのにサビていない。

普通の鉄だったら錆びていて危ないから撤去するはずなのにこれはこのままだ。

純度なのかちゃんとした理由はわからない。

メッキがしてあれば別だがそんな感じでもない。

これを現代の科学者が解明すれば鉄業界に新しい発見があるのではないだろうか。

少なくとも鉄を加工して給料を稼いでいる僕としては興味深かった。

僕はここを事前に本で勉強してきたわけではないのでなんのために作られたのかは分からなかったが誰かが祀られていることだけはわかった。

1時間くらいいただろうか。

「次にいきましょう」

カイト君はそう言って外に向かって歩いて行った。

「デリー門に行きましょう」

何だろうデリー門って。

全然イメージが出来ないな。

カイト君は本の写真を見せてくれた。

どこかの国の門を丸パクリしているではないか。

僕はそう思った。

そして行ってみたら小さかった。

そして多数の警察が出てて中には入れないらしい。

昨日ここで事件があったらしい。

どういう事件かは聞けなかったが遠くから眺めることしか出来なかった。

「じゃあ行こう」

僕は言った。

とりあえず見れてよかったがここには何の感情もなかった。

次に行きたいのはアークシャルダーム寺院。

ここにはオートリクシャーじゃなければ行けないらしい。

少し遠いみたいで200ルピーくれと言ってきた。

早く行きたかったから仕方なく僕たちは乗った。

デリーの街を走り市街から少し離れたところに行った。

遠目に大きい寺院が見える。

僕はその寺院を指差して「あれ?」と聞いた。

「多分そうですよ」

カイト君は本を見ながら言った。

僕が見る限り今までで一番デカい寺院じゃないかな。

多くの人が並んでいるのを横目で見ながらオートリクシャーは寺院に着いた。

つづく。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました