異文化そして洗礼 その10

異文化そして洗礼

クトゥブ・ミナールに着いた。

僕は料金交渉をしないままこのオートリクシャーに乗ってしまっていた。

いくらなのだろう。

こんなことはこの期間でなかった。

彼は僕に対して手を出してきた。

「80ルピー」

あれ?

結構安いね。

今までは2人だったからかな。

僕は100ルピーを払って彼はポケットに手を入れてお釣りを探していた。

僕は手を横に振り,いらないよとジェスチャーした。

それが伝わったのか彼は僕にお辞儀をした。

言葉なんかいらない。

そう思った瞬間だったが本当にその時だけだった。

言葉は必要だ。

今の僕には特に必要だ。

何かトラブルがあったときお金がある人はお金で解決できる。

僕はお金がない。

だから言葉が必要だと思う。

これからは英語だな。

僕は中学生の頃先生に「何で日本人なのに英語を勉強しなくちゃいけないんですか?」

なんて質問していた。

当時はそう思っていた。

しかし今はあの頃にもっと勉強しておけばもっと会話ができていたかもしれない。

ちょっと後悔している。

学校にいると勉強出来るありがたさが分からないのだ。

まあ仕方がない。

帰ってから勉強しよう。

よく考えてみればインドの人も英語が出来るではないか。

外国人相手にお金を稼ぐには必要だよね。

もし日本が外貨で成りたっている国だとしたら我々にも必要だっただろう。

昔は必要だったのかもしれない。

しかし今の僕には日本円以外は必要ないのだ。

そんな生活をしていて人生を終える人もいるだろう。

僕も本当はそれで良かったのかもしれない。

その方が幸せなのかもしれない。

海外の人たちも外に出ないで人生を終える人が多いだろう。

それはそれでいいと思う。

でも僕は来てしまった。

残り時間は少ないがこの特別な時間を大事にしよう。

ここはクトゥブ・ミナール。

これから歩いて中に入ろうとしている。

入場料を払い僕は中に入った。

昨日と同じだ。

写真を撮ったとしてもまた同じ景色になるかもしれない。

でも撮ろう。

そこに違いが出てくるかもしれない。

僕は昨日と同じルートをまわり同じような写真を撮っていた。

アングルが似ている。

同じ人が撮っているからだ。

違うのは天気だけだ。

なんか面白味がない。

ちょっとチャレンジしてみようかな。

僕が撮らないようなアングルで撮ってみたり何だか分からないところを撮ってみたりと今までの僕がみたら恥ずかしくてできないようなことをしている。

画面を確認してみると何かよく分からないし消したい。

でも後からいい思い出になるかもしれない。

とりあえず残しておこう。

そして僕はスマホなどの自撮りが嫌いだが今回はここに来たということで自分でタイマーを使い撮ったりしていた。

まわりの人が見てるから恥ずかしいけどここは我慢だと思いやってみた。

タイマーの時間がよく分からずいつ撮ったのかが確認できない。

恥ずかしかったので画面は確認しなかった。

おそらく他人に見せられるようなものではないだろう。

ゆっくりと写真を撮ってまわってみると意外に手入れがひどいことに気づいた。

入場料を取っているのだからもっと整備にお金をかけないとこれからが大変だな。

要らぬお節介をする。

多分もうここには来ないのに。

観光客の中には結構インド人が多い。

ここは有名なのだろうか。

どんな歴史を持っているのかは分からないがあとで本で調べてみよう。

そろそろ時間だな。

出よう。

写真も撮ったしいい思い出になった。

ここからは地下鉄があったはずだ。

乗ってみよう。

僕は階段を降りてチケット売り場にきた。

全然人がいない。

昨日のように割り込みする人などもいない。

場所が違うだけでこんなにも違うのだろうか。

僕はとりあえずデリー中心地へのチケットをを買った。

ホームに行き電車を待っていると電車がきた。

昨日と同じようなシルバーの電車だ。

一人で乗ってみて改めて分かったがインド人だらけだ。

僕はここでは外国人なのだ。

よく考えてみれば日本にいる外国人も言葉も通じないまま働いている人が多くいる。

そういう考え方をしてみると彼らはすごいんだなと思う。

みんなに見られているような気がする。

そんなの気にすることはない。

僕が日本にいて外国人がそう言ったらこう言うだろう。

しかしそんな気になれない。

こんなに見られたら無理だよ。

もともとインドの人は目力が強い。

そんなに見ないでくれ。

珍しいものではない。

ここで僕はあることに気づいた。

圧倒的に男が多い。

なぜだろう。

女の人もいるが男に囲まれている。

と言うよりは守られている感じだ。

女の子が一人で外に出られないのだろうか。

そういえばそうだ。

女の子が一人でプラプラしているのを見たことがない。

生き辛いな。

言ってしまうと悪いが日本に生まれて良かった。

色々とその国の事情があるのだろうがみんなはここで生きている。

否定はできないな。

そうこうしているうちに目的地に着いた。

階段を上がると何やら外が騒がしい。

僕は騒がしい方向に目を向けてみた。

祭りだ。

みんなが盛り上がっていて遠くから日本でいう神輿のようなものが来る。

道の真ん中では踊っている若いインド人が少しずつ前に進みその後ろから神輿のようなものがついてきている。

ここでも僕はカメラを構えて写真を撮る。

撮ることに真剣になっていて画面の確認などはしなかった。

祭りの群れは通り過ぎて行った。

いいタイミングでここに来たね。

満足だった。

ここに来てお腹が減ってしまった。

何か食べるものはないだろうか。

少し歩いてみるとマクドナルドがあった。

「インドにもマックがあるんだな」

独り言を呟きながら僕は店に入った。

あれ?

何でお昼すぎなのにハッシュドポテトがあるのだろう。

良いのかな?

他の人が食べているのを見て僕も食べたくなった。

僕はメニューにはなかったがハッシュドポテトと言った。

店員はうなずいた。

良いんだ。

残り物かな。

よく分からないが僕は受け取り席についた。

味は普通。

日本と同じ。

安定の味だ。

裏切らない。

いつもは食べるのが遅いのにここでは早かった。

僕は外に出て次の目的地に向かった。

昨日開いていなかったジャマーマスジット。

時間を見ると午後4時。

昨日と同じだ。

ちょっとやばいな。

僕はオートリクシャーを探し運転手に声をかけた。

「ジャマーマスジット」

運転手はオッケーと言い出発した。

今回はちゃんと交渉をして50ルピーで行くことを約束してくれた。

こういう交渉も旅の醍醐味なのだろうが生活しているとなると大変だな。

いちいちこんなことは出来ない。

ストレスになるだろう。

短期間だから楽しいのであって生活となると無理だ。

インドの景色は日本と比べると汚い。

はっきりと言える。

でもこれは文化の違いなのだ。

あとは材料が石か木の違いだと思う。

ここではこれが普通なのだ。

一度裏道のようなところを通り、人がいなくなったのだが、だんだんと人が多くなってきた。

近づいてきたのだろう。

見えてきた。

チャンドニーチョークだ。

僕はここを通り過ぎてジャマーマスジットに向かった。

門を通り階段を上り入り口に着いた。

大丈夫かな。

普通に靴を脱ぎ通ろうとしたときに呼び止められた。

「もう入れないよ。」

係の人は僕に言った。

いやいや、まだ入ってる人いるじゃん。

僕は他のインド人を指差して係の人に分かってもらおうとした。

しかし彼は「インド人だけだよ」と言った。

確かに入って行けたのはインド人だけで欧米や日系人は入れなかった。

宗教の関係なのかな。

仕方がない。

そう思い僕は昨日カイト君と座った場所にもう一度座り景色を眺めていた。

何枚か写真を撮り僕は立ち上がった。

メインストリートに行こう。

この旅で初めて歩いたところがメインストリートだからあそこで最後にしよう。

僕は外にいたオートリクシャーに頼みメインストリートに行くように伝えた。

しかし運転手は出発しなかった。

誰かを待っているようだ。

違った。

待っているのではなくもう一人乗ってくれる人がいないか探しているのだ。

そのほうが儲けがいいからね。

それは分かるよ。

今回は僕も待った。

しかし5分待っても来なかった。

彼は僕に50ルピーと言っていたので2人だったら100ルピーだ。

しかし誰も来ないので運転手は仕方なく出発した。

彼は今まで僕が会ったインド人と比べて親切だった。

何となくそう思った。

あたりが暗くなってきてメインストリートに着いた。

彼は50ルピーと言い僕は100ルピーを渡した。

もちろんお釣りはいらない。

僕はお金持ちではない。

でも出したいと思ったところには出したい。

何となくそう思った。

もっとくれ、もっとくれみたいな奴にはあげない。

それは日本人として共感してくれるはずだ。

理由はうまくいえないのだが何となくそうなのだ。

彼は僕にお礼を言い僕はメインストリートを歩き出した。

ここをひたすら歩いて最後にしよう。

写真を撮るのも忘れずに。

ここら辺は最初にきて衝撃を受けた布切れ1枚の人たちが多く存在していた。

なぜだろう。

露天の前で座って並んでいる。

ご飯をもらおうとしているのだろうか。

はたしてもらえるのだろうか。

夜になり暗くなりそして寒くなっていた。

彼らの心配をしつつ僕はレストランを探した。

最後くらい良いものが食べたい。

そう思ってしまった。

僕はメインストリートにちょっとした高級ホテルがありその横にレストランがあることは知っていた。

朝出ていく前に確認していたのだ。

僕はそこへ入りパスタとビールを頼んだ。

お酒は好きだがビールはあまり飲まない。

しかしメニューに書かれていたのがあまり分からずビールにしてしまった。

こういうところも英語を勉強しておけば良かったと後悔している。

料理が出てきて食べてみたものの普通だった。

味、雰囲気、値段。

どれをとっても普通だった。

最後に拍子抜けだったので外に出たらもうちょっと食べよう。

お会計を済ませ僕は外に出た。

飛行機の出発までまだ時間があるから少しだけ休んで行こう。

さっき食べたレストランの近くに小さい食事処がある。

ここはローカルだ。

何を頼もうか。

クレープのようなものとジンジャーハニーレモンティー。

ドリンクとしてこれは外せない。

もしかしてこの味は日本で飲めないかもしれない。

最後に堪能したかった。

ここで30分くらいゆっくりして僕は外へ出た。

意外に夜遅くでもお店はやっているんだな。

僕はそう思った。

最初に来たときはこんなに朝早くから店を開けているんだなという印象だった。

なんかつじつまが合わない。

そんなに長時間開いているのだろうか。

でも夜中はさすがに閉めていたはずだ。

なんか不思議だな。

そう思いながら会社の同僚へのお土産を探した。

客引きがいたわけではないが僕は小さいお土産屋へ行き店主が勧めてくれた紅茶を買った。

インドは何気に紅茶が有名なのだ。

僕もあまり知らなかった。

お会計をしている最中に店主は僕にこれからどこに行くの?と聞いてきた。

僕は「空港だよ」と答えたら店主はタクシーどうだい?

と言ってきた。

どうしようかな。

できれば早めに空港には行っておきたい。

乗り遅れたらみんなになんて言えば良いか分からない。

僕は「いくら?」と聞いた。

店主は500ルピーと言ったが僕は断った。

何かを僕に言っていた気がしたが僕は無視して外に出た。

僕は歩いてメインストリートを出てタクシーを探した。

さすがに空港までオートリクシャーはしんどいな。

僕の前に1台のタクシーが止まった。

さっきの店主だ。

どうしても乗せたかったのだろう。

僕はもう1回「いくら?」とわざとらしく聞いた。

500ルピー。

そう答えてきた。

僕はそのままその場に立って他のタクシーを探していた。

少しして店主は350ルピーで良いよ。

そう言ってきた。

交渉は好きではないが500ルピーは高い。

僕は350ルピーなら良いよと言ってタクシーに乗った。

パスポートとお金がちゃんと首からかけたバッグに入っているかを確認して出発した。

これでここに来ることは2度とないな。

寂しい気持ちも少しあるが仕方ない。

時間は過ぎていくものだ。

日本に帰ろう。

タクシーの中で僕は景色を眺めながら小さい声で呟いた。

つづく。

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました