現実へ戻される その4

現実へ戻される

会社で朝の大朝礼が終わりそれぞれが各課に行き作業を始めようとしていた。

僕が冬休みにインドに行っていたことはみんなが知っていた。

みんなが持っているインドのイメージと実際に行った僕の感覚は少し違うがだいたいは合っていた。

汚いとか匂いがキツいとか人を騙すとか嘘つくとか色々なイメージを持ってる。

当てはまるのだがインド人全員ではない。

その中には僕たちよりも高い意識を持っている人や教育がしっかりしていている人も多い。

何よりも一緒にいた2人の若者には明るい未来を感じていた。

今の僕には無くとても羨ましい。

僕はもう34歳だ。

結婚のことも聞かれるし将来この仕事のままでいいのかも自分で問いただす時もある。

このままでいいのかと。

正直に言うと何かやりたいことがあるわけじゃない。

再就職を考えていても直接的に世の中の役に立てるような人間では無い。

それはわかっている。

色々と考えたのだが今はここにいる。

それはこの物づくりという仕事が好きだということ、あとは他にやりたいと思ったことがあったとしても行動出来ていなくてこのままだという事。

どんなに考えて計画したとしてもここにいることは変わらない。

今の環境が合っていたり会社の待遇が良かったりと理由はいっぱいあるだろう。

もしかしたら楽だからという理由かもしれない。

あんまり良い意味では無いがそういうことも考えられる。

しかしみんな目の前にある仕事を一生懸命こなしている。

それは尊いことだ。

物づくりというのは直接人に感謝されることが少ない仕事だ。

何かの役に立っているのは分かるが受け取った人がどういう形でこの製品があって良かったなと思っているのだろうか。

特にうちの会社はメーカーでは無い。

完成品ではなくてパーツレベルで製品をメーカーに納めているから余計にそう感じる。

感謝などされようがされまいが受け取るお金は同じだ。

しかし人間には心というものがある。

仕事をする上で感情や人間関係は大事だ。

そこが欠落しているから僕は無機質な鉄の製品を毎日作っていられるのだろう。

確かにマニアックになってくると鉄の状態や温度などによって同じ製品を作るにも少し加工方法を変えないといけない。

そこまでいけば一人前だし人に教えられるレベルになってくる。

僕みたいに自分だけの解決方法を持っているなんて人の上に立つレベルでは無いのだ。

僕はそう思っているがなぜかこの係ではまとめる役割を担っている。

楽しいものではない。

時にはキツく当たらなくてはいけない時もある。

相手も嫌な思いをするだろうが言った本人もそんなに良い気持ちではない。

冬休みで浮ついた気持ちのまま1日が過ぎた。

毎年の事だが初日は仕事にならない。

みんなも同じだろう。

中途半端にオフを作るとこうなるのだ。

これが今の日本の休み方だから仕方がない。

サービス業の人はもっと大変だ。

まとまった休みなどない。

僕には無理だ。

まだそういう仕事をしたことはないが多分無理だ。

高校の時にアルバイトでラーメン屋で働いていたことはあるがあの時は学生だったので休みのことなんて何とも思っていなかった。

もうそういう仕事につくことはないだろうな。

とりあえずこのお休み気分を何とかしてしっかりと仕事をしよう。

カメラをいじり写真の雑誌を見ながら僕はそう思っていた。

つづく。

 

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