暑さ その5

暑さ

僕はスマホをいじっていた。

この飛行機という狭い空間の中には何もないのだ。

正面を見ればディスプレイがあり映画やアニメが見れるようになっている。

僕はまだこれを見なかった。

なぜかというとこれから何時間もこの狭い空間にいなくてはいけないのにいきなりこの目の前にあるエンターテイメントを見て終わってしまったら本当に何をしていいのか分からなくなってしまう。

それが怖かったのだ。

そして心のどこかに少しだけ保険が欲しかったのだ。

寝れない、スマホも全て見てしまった、ご飯も食べた、トイレも行った。

これを全部やり終えた後に残っている物がほしかったのだ。

僕は閉所恐怖症ではない。

やることがなくなるのが怖かったのだ。

仕事が忙しくて他のことが何も出来ないって愚痴を言っている自分が嘘のように何もすることがないのが怖い。

多分僕はお金持ちになれない。

それは僕は受け入れている。

僕の母は僕が物心ついた時からずっと忙しくしている。

母がどう思っているのかは分からないが仕事でも家事でも何でも忙しくしていることが正義だったのかもしれない。

思えば休みの日もゆっくりしているのを見たことがない。

そんな母から生まれてきた僕だからそこは受け入れるしかないのだと思う。

もし僕がいつもヒマにしていてお金持ちだったら母は僕のことをなにか悪いことでもしているのではないかと疑うだろう。

そう思われたくないという訳ではないがいつも忙しくしている。

僕自身忙しいのがいいことだとは思ったことはない。

ただ僕の人生の中であまり時間のバランスが取れていた時がない。

もしかしたらあったのかもしれないのだが自分自身がそう思っていなかったのかもしれない。

つまりは僕の人生は心の余裕がなかったのだと思う。

最近少し時間をゆっくりと無駄に使えるようになってきたのかもしれない。

歳をとってきた証拠だろう。

2度目はないと思っていた一人旅。

もうやらないと思っていたし、まわりにもそう言っていた。

でも、心の中では望んでいたのかもしれない。

僕は自分の心の声を受け入れて今回実行にうつした。

もちろん予算にもこだわった。

前回よりも良い旅にしたいという事と、この旅が続けられるような予算を組まないといつしか行けなくなってしまうと思う。

贅沢を言えば芸能人達が旅行に行っているように良いホテルに泊まって安全で間違いのないようにガイドを雇ってみたい。

僕はそこまで予算が無いから自分で調べて自分で行動をして動かないと前に進まないのだ。

今の僕には予算が無いから仕方がないのだ。

そんなことを考えているうちにさっき言っていたやることがほぼ全て終わってしまった。

ご飯食べた、トイレ行った、スマホ全部見た、しかもやっぱり寝れない。

あとは目の前にあるこのディスプレイにかけるしかないな。

何の映画を見たのかは忘れてしまったがとりあえず見れたので2時間くらいは潰せたな。

これを見終わった頃には広州に着く。

そこが最終目的地ではないのだがひとまず落ち着ける。

乗り継ぎなんてしたことないし僕のバックパックもちゃんと乗り継いでいるのだろうか?

心配でしかない。

誰かに聞いてみよう。

前回僕の課題にしていた英語は上手くなっていない。

もちろん勉強していないからだ。

大丈夫だろうか。

つづく。

 

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