暑さ その9

浅黒い男の子は日本人だった。

名前はハモマト君。

彼は学生で夏休みを利用してここに来ている。

何となくだがイケイケな感じでカッコ良かった。

多分彼はモテるだろうな。

僕がモテないからそう思った。

その時だった。

彼とお互いの出身地などの話をしていた時に僕の前に1台のスクーターが止まった。

女の人だった。

この晴天の早朝に全然似合わないケバい化粧。

彼女は僕を見て下手な日本語でこう言った。

「お兄さん時間ある?」

「一緒に行こうよ」

彼女はそう言った。

この時僕は驚いてしまって何も言えなかった。

「行っても良い事ないですよ」

ハマモトくんはそう言ってくれた。

ごもっともだ。

僕は横に首を振り断った。

間違いなく娼婦だろう。

結構人の多い場所にも平気で日本人を見つければ積極的に声をかける。

なかなかの強者だな。

途中で気にしてくれていた彼には感謝している。

別に1人だったとしてもついていくつもりはないが。

ハマモトくんはこのホーチミンでゆっくりしていて今日バスでカンボジアに行くらしい。

僕もホーチミンに来た理由は直接カンボジアに行くのは難しかったし、ここと同じような乗り継ぎでも値段が高かったのだ。

だからホーチミンには申し訳ないがここは通過点でしかなかったのだ。

彼は僕が並んでいたバス会社でチケットを取ったらしい。

チケットが残っていれば僕も同じ時間のバスに乗りたかったのだが残念ながら売り切れていた。

彼と旅をするかもしれないという予感は外れた。

違うバス会社に行ったらすんなりチケットは取れた。

バス会社に何か違いがあるのだろうか。

よく分からない。

先にハマモトくんが乗るバスが来た。

乗る前に彼は言った。

「シェムリアップに行くんですよね?」

「もし時間があれば一緒にご飯食べましょう」

そう言ってくれた。

嬉しかった。

僕はインドから帰って来た時にFacebookに登録した。

もしこういう出会いがあった時には何かと繋がれるからだ。

誰とでも繋がりたいわけではない。

でもこういう形で出会った人たちとは繋がりたいなと思っていた。

彼と連絡先を交換してから彼は軽くお辞儀をしてバスに乗り込んだ。

僕は手を振り彼を見送った。

僕が乗るバスの時間までは少し時間があったので市街を歩いて写真を撮りにいった。

ホーチミンに来たのはいいけれど何もしないで通り過ぎるのはもったいない。

ここに来ることはもうないかもしれない。

いや、いつかは来るかもしれないがしばらくは来ない予感がしていた。

ある程度写真を撮った後にバス乗り場に戻ったらみんなが移動しようとしていた時だった。

歩いてどこにいくのだろう。

僕の乗るバスはここではなく裏に止まっているらしくそこまで歩いて行った。

僕の席は一番後ろの左。

窓側だ。

僕はバックパックを預けてバスに乗り込む。

夏休みということもあり満席だ。

僕は席に座り乗るちょっと前に買ったコーラを少し飲んで落ち着いていた。

僕の隣とその隣はいない。

ラッキー。

そう思っていたのだが最後に入って来た欧米のカップルがその席に座った。

僕の隣に座った黒人女性は非常にふくよかで座った瞬間に僕の席にまで圧迫して来た。

いくら窓側の席とは言えこんなに窓が近い感覚は初めてだ。

ほぼ半ケツ状態。

カンボジアの首都プノンペンに着くのは4時間30分後。

結構ツライな。

バスが動き出した。

バスの左後ろにいる半ケツ状態で座っている男がカンボジアに出発した。

つづく。

 

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